「奇妙な攻撃性」から始まる脳髄の冒険
森村誠の作品を一言で表すならば、それは「奇妙な攻撃性」である。
イギリスでの活動を一旦終え、日本に帰国した直後に行われたパフォーマンスがそ
れを端的に物語っている。八畳ほどの四角いフロアの中に動き回るウサギのヌイグル
ミ、機械仕掛けでやかましく動き回る十数体の可愛らしい人形達は、皆その後ろにネ
ズミ獲りを引きずっている。そのネズミ獲りは誤って触れてしまおうものなら、人間
の指の骨なぞブチ折ってしまう程の威力を持っている。可愛らしい姿とは裏腹に引き
ずる危険と殺伐とした機械音。その「存在」が充満した空間に一人佇む森村自身。全
てが「奇妙な攻撃性」を放っている。氏自身すらもが作品世界を構築する一部分とな
っていた。
そして一連のテキストをモチーフとした作品群である。それは膨大な量の文字の中
から、ある特定の文字を消し去ることによって創りだされる。一冊の本の中に存在す
る何かがその時消え去り、または生まれるのだ。人間の「認識」という世界を挑発す
るその手法は、その手に取られた作品によって発露し、それを受け取る人間の脳髄の
中で補完されるのである。それはまさしく文学作品に人が接する行為そのものである
といえる。彼の試みとはまさに芸術という全ての行為を自分の土俵に招き入れ、吸収
し、見事に乗っ取ってしまうことだ。既存の辞書や小説という確かな存在は、彼の手
により、より明確に柔軟な存在へ、新たな世界へと変換されたのである。
森村誠の「奇妙な攻撃性」、それは脳髄の冒険を誘発する呼び水となるのだ。
竹内 敬一 (フリーランス ライター)
